公開イベント<「ベサメ名著」の夕べ>を企画進行中。で、ただいま村上春樹の『風の歌を聴け』を読んでいます。
……てなわけで、かなり春樹ワールドに浸かっているワタクシ。それを前提に以下は読んでくださいね。実際にあった事だけれども。
午後、客先に向かうため、渋谷駅前を同僚と打ち合わせながら歩いていた。
前からサングラスをかけ、「(゚Д゚)ゴルァ!!」と怒鳴りながら歩いてくる男がいる。目が合った気がした。
何ごともなくすれ違った……と思った瞬間、背中をバシッと叩かれる。
驚いて振り返ると、サングラス男が7メートル後ろでこちらを向いていた。「(゚Д゚)ゴルァ!!」ともう一度、男が言った。
同僚が心配して「大丈夫?」と聞いてきたが、背中は痛くない。友達同士で悪ふざけしていて叩かれたような、親しみの表現とも取れるような不思議な感触があるだけだ。
そのまま、歩みを止めずに、元の目的地へ向かった。
私のほうには、なぜだか怖れがなかった。彼からの怒りの放射も感じなかった。「私の子ども」という言葉が頭をよぎった。もし時間があって、同僚がいなかったら、彼をハグしていたかもしれない。私よりも年上と思われる、おそらくは精神が病んでいるその男が、私の中の何かのスイッチを入れたのだ。
ああ、これが聖者だ、と思った。
他人には訳のわからないやり方で、サングラス男はたしかに、私に癒しをもたらしたのだ。